メモ:選択公理抜きで線型写像をどれだけ自在に選べるか

以下の会話(抜粋)に関連してメモ。

(注:$x = 0$かつ$y \neq 0$だと成立しないため、そうでないという仮定を各自で幻視してください。)
冒頭に挙げられた命題(これを(*)で表す)から、最後に挙げられた命題、より正確には

線型空間$V$の一次独立な元$v_1$,$v_2$、同じ体上の線型空間$W$の元$w_1$,$w_2$について、$f(v_1) = w_1$,$f(v_2) = w_2$を満たす線型写像$f : V \to W$が存在する
(これを(**)で表す)

選択公理抜き(ZF公理系)で導けることを示す。このことと上で引用した内容から、冒頭の命題(*)はZF公理系では証明できないことがわかる(選択公理を使える場合には、$v$を含む$V$の基底が取れることから件の性質が証明できる)。


まず、命題(*)を

線型空間$V$の元$v \neq 0$、同じ体上の線型空間$W$の元$w$について、$f(v) = w$を満たす線型写像$f : V \to W$が存在する
(これを(***)で表す)

という形に拡張できることを確かめておく。
実際、(*)を用いて直和$V \oplus W$上で$v$$w$に写す線型写像が得られるので、あとはその定義域を$V$に制限した上で、行き先側で射影$V \oplus W \to W$と合成すればよい。


さて本題に戻ると、まず、(***)を用いて$g(v_1) = w_1$を満たす線型写像$g : V \to W$が得られる。
次に、$v_1$で生成される部分空間で$V$を割った商空間を$V'$と書き、射影$V \to V'$$\pi$と書くと、再び(***)を用いて、$\pi(v_2)$$w_2 - g(v_2)$へ写す線型写像$V' \to W$が得られる($v_1$$v_2$が一次独立であることから$\pi(v_2) \neq 0$であることに注意)。これと$\pi$を合成したものを$h : V \to W$と書くと、$h(v_2) = w_2 - g(v_2)$であり、一方$\pi(v_1) = 0$なので$h(v_1) = 0$である。
これらから、$f = g + h$$f(v_1) = g(v_1) + h(v_1) = w_1 + 0 = w_1$および$f(v_2) = g(v_2) + h(v_2) = g(v_2) + (w_2 - g(v_2)) = w_2$を満たす。これが(**)で求められている線型写像である。(証明終)