日常と三角関数
先日、某所で「みんなに高等教育を受けさせるのなんて不毛だよね。例えば数学の三角関数なんて学校出たら使う機会ないじゃん」(←大意)みたいな主張を目にしたので、最近日常生活で出会った三角関数(三角比)が役立つ場面を書きます*1。
色々あって、妻が妻の友人のためにお皿とコップを入れて使う巾着袋を手作りすることになりました。お皿は立てた状態で袋に入れ、コップは左右真ん中ぐらいの位置に置くと据わりが良いと考えると、上から見た両者の位置関係は下の図のようになると考えられます*2。
お皿の幅を 2a、コップの直径を 2b とおいて(2倍で表記しているのは後で長さの半分を考える都合上)、寸法を書き入れた図はこちら。
さて、この袋を作るには布の幅をどのくらい取ればよいか?と妻から尋ねられました。仮にギリギリの大きさにすると布は下図の青線のような具合*3になると考えられるので、この青線の長さを計算して、念のため少し余裕を持たせた幅にすればよいでしょう。
左右対称なのでひとまず左半分だけに着目して、下図のように補助線を引きます。
詳細は読者の演習問題とする割愛しますが、∠AOB(=∠AOD)=α とすると∠COD = π - 2αとなるので弧CDの長さは (π - 2α)b、また線分 AB と AD の長さは AB = AD = a なので、左半分の青線の長さは 2a + (π - 2α)b 、よって全体では 4a + (2π - 4α)b となります。
あとはαを計算すればよいわけですが、ABO が直角三角形なので三角比を用いて、はい皆さんご一緒に、三角比を用いて、 tan α = AB/OB = a/b という関係式が得られます。これより α = arctan(a/b) となり、件の青線の長さ L は全部で L = 4a + (2π - 4 arctan(a/b)) × b となります。
実際の例ではお皿が20cm幅、コップが直径5cmという想定でしたので、a = 10、b = 2.5となり、L = 40 + ( 2π - 4 arctan(4) ) × 2.5 (cm) となります。電卓によると2π - 4 arctan(4) はおよそ 0.98 とのことですので、この場合 L はおよそ 40 + 0.98 × 2.5 = 42.45 (cm) 、と計算できます*4。
めでたしめでたし。