国際論文誌発表数と英語のライティング能力の話

先日の記事にトラックバック頂いたid:min2-flyさんの研究者の生産性は英語のライティング能力と強く関係する! ・・・ただしブラジルの話。 - かたつむりは電子図書館の夢をみるかという記事にて、以下のような研究が紹介されていました。

実際にブラジルの研究者51,223 人(博士号を持つ人)に英語能力に関しての質問紙調査(writing、readingそれぞれについて"Good skill"を持っていると思うか、まあまあか、"Poor skill"しか持ってないかを尋ねる)をやって、それと国際的な学術誌(英語)での論文発表数を照らし合わせてみた・・・という内容。
(引用時中略)
メインとなる英語のライティングスキルと国際誌発表数の関係については、"good skill"を持っていると答えた人の割合と論文発表数は強い正の相関関係にあり(r=0.92, p<0.01)、一方で"poor skill"しか持ってないと答えた人の割合と論文発表数はやや強い負の相関関係(r=-0.78, p<0.05)であったとか(ちなみにポルトガル語での論文発表数との相関は、good skillを持っていると答えた人の割合と論文数は相関、一方poor skillと論文数は有意な相関なし)。

研究者の生産性は英語のライティング能力と強く関係する! ・・・ただしブラジルの話。 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか


id:MarriageTheoremはこういう相関関係を目撃すると隠れた相関因子や因果関係の逆転(←真っ当な専門用語を知らずに書いているので用語の使い方は適当です、念のため)を妄想せずにはいられない困った性分なので、今回もいくつか考えてみました。

  • 自己申告で「私は英語を書くのが得意だ」と回答しちゃうような強気な人ほどガンガン論文を書いて投稿する傾向にある・・・かもしれない
  • 「英語が得意だから論文が多い」のではなくて、論文を沢山投稿する過程で必然的に英文を沢山書くし査読コメントで英文に関するアドバイスも受けやすい、つまり「論文を沢山書いたから英語が得意になった」・・・かもしれない
  • そもそも、ナイーブな意味で「頭の良い」人ほど英語も得意だし研究も得意・・・かもしれない

まぁ、1番目と3番目はともかく2番目はそこそこあり得る話かなぁとも思うので、次にこの手の調査をされる方はぜひ、英語力に関する調査をした後に論文数がどう推移したかの追跡調査をして頂きたいところではあります。

おまけ(与太話)

id:min2-flyさんも書いてたけど、研究者の英語力の調査方法が自己申告のアンケートってのはちょっと気になるよね、何か客観的なテスト方法があるといいんだけど」
「でもTOEFLとかだと英語力以外にも、TOEFL慣れやこの手のテスト慣れしているかどうかも影響しちゃいそうじゃない?」
「う〜ん、かといって今回専用に新しくテスト方法を開発するのは大変だしなぁ」
「それに、研究者としての能力との関係を観るんだから、研究に必要な英語力をできるだけ抽出したいよね」
「・・・何かないかなぁ・・・」
「・・・」
「・・・じゃあ、研究者の英語力を「英語の発表論文数」で計るのはどう?これなら研究に関係ない英語力には影響されないし、レベルの高い国際誌だと英語がダメという理由でリジェクトされることもあるから英語力の指標になってるんじゃないかな?」
「おお!なるほど、それなら初めから数値化されてるから扱いやすいしね。それでいこう!」
「じゃあ、その指標を用いて、研究者の英語力と英語の発表論文数の間の関係を調べて・・・って・・・あれっ?」