数学博物館 in ギーセン(ドイツ)に行ってきた

しばらく前の話ですが、出張でドイツのギーセン(Gießen)市を訪れた際、現地にある数学博物館(名称:mathematikum)に行ってきました。面白かったので少々感想などを書きます。


mathematikumはギーセンの中心駅から歩いてすぐの所にありまして、わりと探しやすい立地だったと思います。ギーセン市自体は、フランクフルト中央駅から電車で1時間前後で到着できました(記憶がやや曖昧なのでご注意ください)。建物の外観は下の写真2枚のような感じです。


この博物館は、数学のトピックを中心に、数学と関連の深い他の科学分野からのトピックも交えた展示物からなり、それらは全部で150件ほどに上るようです。題材は、比較的簡単な原理に基づくものから高度な背景を持つものまで様々です。
展示物の多くが模型や装置などを実際に触ったり動かしたりできる体験型であり、中には数字や図形をネタに使ったユーモラスなコーナーもあったりするなど、展示物の基になる理論や数学的事実を知らなくても充分に楽しめる構成になっています。そのこともあってか、私が見学している最中にも、近所から遊びに来たっぽい子供たちや、どこかの学校の生徒っぽい団体客がやってきたりと、想像よりも子供客が多い印象を受けました。


建物に辿り着くと、玄関前の歩道に設置されている下の写真のような装置に出迎えられます。これは、2個重ねられたゴム製の球に縦にワイヤーが通されていて、球を持ち上げて放すと落下した球が地面で跳ね返るというものです。球の大きさは、上の球よりも下の球の方が大きくなっています。さて、これらの球2個を重ねた状態のまま持ち上げて手を放すと、一体どのような弾み方をするでしょうか?


玄関を入ってすぐの所には、下の写真のような縦に連なった歯車が飾ってありました。この歯車は、下側の歯車が10回転するとすぐ上の歯車が1回転するように設計されているとのことで、一番下の歯車は頑張って回っていましたが、下から2番目の歯車はそれと比べてかなりゆっくりな回り方でした。

この歯車の全体図は下の写真の通りです。指数関数の威力に思いを馳せてしまう壮観な眺めですね。この装置、一番上の歯車の動きが目視で確認される日ははたして来るでしょうか?

(ちなみに、多くの展示物にはドイツ語だけでなく英語でも説明文が添えられていまして、ドイツ語を読めない私は大いに助かりました。)


個人的に特に興味深かった展示物の一つが、下の写真にある、放物線を使った掛け算計算器です。使い方は、右側(プラス方向)の位置aにある放物線上の点と、左側(マイナス方向)の位置bにある放物線上の点を結ぶと、中心軸上にa×bの計算結果が現れる、という具合です。原理自体は言われてみればなるほどというものでそこまで高度というわけではないのですが、こんな風に掛け算の計算ができるというのは知らなかったので勉強になりました。

もう一つは下の写真にある展示物で、これはある有名な数学的予想(未解決問題)を「体感」できる装置です。さて、その数学的予想とは一体何でしょうか?(写真が見辛いかもしれませんが、各々のピースに数字が書かれていて、それらが「ある性質」に応じて色分けしてあり、レバーを回すとレールに沿ってピースが動く、という具合です。)


他の展示物の例として、下の写真にあるのは最近話題の錯視に関するオブジェです。これは正しい位置に立ってオブジェを眺めると有名な不可能図形に見えるというものですが、正解の位置を見つけるのが意外と難しくてかなり熱中できました。私は一人で来ていたのですが、もし複数人で来ていたとしても、各自の背丈によって正解の位置が変わるので、全員がそれぞれに楽しめただろうと思います。

また、下の写真はタイル張りの理論に関する展示物…ではなく、単に窓から見えた民家の屋根です(笑)。


変わり種の展示物としては、下の2枚の写真にある"the ultimate machine"と題された電動装置が挙げられます。その筋の人なら「ああ、アレね」と感付かれるかもしれません。私もネタを知ってはいたのですが、実際に動くところを見るとインパクトというかシュールさがまた一段と際立っていました。(ネタバレは野暮なので解説はしません。)


ちなみに、職場の関係で気になる暗号関連の展示物としては、この手の展示でよく使われる視覚的秘密分散法の他、いわゆる誕生日のパラドックスを体感できるルーレット(下の写真2枚)が設置してありました。ある横一列に同じマークが二つ以上現われるのを「当たり」とすると、およそ半々の確率で当たりが出る計算とのことです。


最後に、全館回り終えて玄関に戻ってくると、下の写真のようなものが置いてあるのを見つけました。これは、両脇の箇所からコインを投入すると綺麗な軌道を描きながら転がっていき、最後には中心の穴に落ちていくという仕組みです。で、穴に落ちたコインはこの博物館への寄付金になるという、物理法則の美しさを活かした華麗な寄付の募り方です(笑)。私も何枚か試しましたが、確かに転がり方が綺麗なので何度も試したくなるのですよね。本当によくできているなぁと感心しきりでした。


というわけで、3階建ての博物館全体を回りきるのにおよそ2時間ほどかかりました。ここで紹介したものは展示物全体のほんの一部で、他にも面白いものが色々と置いてありましたし、展示物以外に建物の内装なども凝っていて、本当に楽しい施設でした。もし近くに行かれる用事がありましたら、こちらの博物館へも少し足を延ばしてみてはいかがでしょうか。