大学で実践的教育?無茶ですよ。

いや、そうじゃなくって、実践的教育をすべきでしょ。 - haruulalaの日記より。

大学院生に実質的な給与を 基礎科学力委が提言

http://www.asahi.com/national/update/0805/TKY200908040424.html

理系の院出身者としての背景を基にしていえば、正直不要な施策。

それよりも、博士課程、とくに後期課程(博士)終了後に、国内外問わず民間企業で即戦力として働けるような実践的な教育をして欲しい。

http://d.hatena.ne.jp/haruulala/20090806/1249522834

あのですね、大学で「企業で即戦力になれる実践的教育」をしろだなんて、そんなの無理に決まってるじゃないですか。
目の前の学生が将来どの業界のどの企業に行くことになるかなんて事前にはわからないんですよ?その業界、その企業で働くために求められる知識や技術、特に「実践的」なものであれば尚更、は業界や企業によって大きく異なるわけで、そのような知識や技術を事前に網羅的に教え込んでおくなんて現実的な話とは思えません。
(この点は仮に大学に民間企業出身の教員を増やしたところで同じことです。その教員だって結局、「自分が棲んでいた業界」のことしか実践的には知らないんですから。)


大体、その業界の住民ではない教員に「その業界での実践的知識/技術の教育」というものがもし可能なのだとしたら、逆にその業界の専門性ってその程度のものでしかないということですよね。
私が民間企業の人材集め担当だとしたら、「お宅ら素人にウチの業界の即戦力なんて育てられるわけがないでしょう、無理なことはしなくていいからお宅の院生を半年か一年くらい勉強によこして下さい、こっちでウチの流儀を叩き込みますから」と考えるでしょうね。
実際、唯一「即戦力」な院卒生をコンスタントに排出できる策があるとしたら、企業向けインターンシップの充実ぐらいのものだと思いますし、それはむしろ積極的に推進したらよいと思っています。ただ、その場合も大学側が行えるのは後方支援だけで、実際に「教育」を行うのは受け入れ企業の側になるんですけどね。
結局のところ、企業が院卒の新卒生(学部卒でも同様でしょうが)を戦力として使おうと思ったら、新卒生にもできる仕事(研究とか)を割り振るか、自分のところできちんと教育を施すかのどちらかしかないと思うのですよ。そのためのコストを企業自身が負担するか、別のどこか(国など)が負担するかはまた別に考えるべき問題ではありますが。


あと、元々の話題だった実質的給与型の経済的支援については、元記事の方のように「不要」と言えてしまうほど経済的に余裕のある大学院生(特に博士課程生)ってそこまでの多数派ではないよなぁ、というのが数年前まで院生だった私としての正直な感想です。
私自身は学費免除の申請を出しつつ(通っても半額免除が関の山でしたが)奨学金やTA/RAの給料で授業料や生活費(仕送りの不足分)を賄うという院生生活でしたが(学振DC2に通るまでの間は)、周りの友人を見ていると塾講師や家庭教師や普通のお店でアルバイトをしている人がかなり多かったですし。その時間を勉強や研究に充てられるとしたら、その人たちは殆どが喜んだんじゃないかなぁ、と思います。