ちょっと面白いな、と思った補題 続編

先日の補題の話に対して、id:shota_pubさんから

持っている本の2冊がCauchyの判定法の証明のところで証明して使ってました

というブックマークコメントをいただきました。
なるほど、Cauchyの判定法はこの補題を経由しても証明できるんですね。言われてみれば確かにそうですが、気がつきませんでした*1。ありがとうございます。


で、ひょっとして、と思ってちょっと考えてみたところ、件の補題、つまり

有界な実数列について、任意の収束部分列が共通の値に収束しているならば、もとの数列自体も収束する

という性質は実数体の特徴付けの一つになってるんですね。
ちゃんと述べると、順序体*2が上の性質を満たしていればそれは実数体(と同型)である、ということが言えます。
証明としては、別のもっと有名な特徴付けである「上に有界な広義単調数列は収束する」を上の性質から導くことで示せます。最初は「Cauchy列の収束性+アルキメデス*3」を導く方針で考えていたのですが、アルキメデス性の簡潔な証明が思いつかずに方針転換しました。簡単な証明をご存知の方、ご教示下さいますと幸いです。


こうして色々考えてみると、この補題、結構使い勝手の良い性質に思えてきました。ちゃんと憶えておこうっと。

*1:手元の解析学の本ではもっと直接的な証明が与えられていましたが、どちらがより直感的に理解しやすい方法でしょうか

*2:簡単に言うと、四則演算と大小関係が定義されていて両者が自然な性質を満たしている集合のこと。色々な本に載っていますが、詳しくは例えば齋藤正彦『数学の基礎 集合・数・位相』(東京大学出版会 基礎数学14)の第2章あたりをご参照下さい

*3:自然数の逆数の列が0に収束する」ことと同値