学生指導の外部委託はほどほどに

計算機科学系なら卒論は3月中にまとめなおして国際会議に投稿しよう - 発声練習」と、そこで知った記事「卒論を書き上げた後、研究者を志す学生が初めにすべきこと」について。

分野によっては非現実的かもしれませんが、研究者を志す学部4年生には卒論を改善したものを一度投稿してみることをお勧めします。 無料で自分の研究について検討して貰えて、場合によっては大学院における研究方針まで示唆して貰える訳ですから、チャレンジするべきだと思いませんか?
(中略)
さぁ、明確になった課題を一つ一つこなしていき、すべてクリアしたならば思い切って論文投稿に挑戦しましょう! 研究に学年は関係ありません。 必要以上に学術雑誌を神聖化せず、ガンガン論文を書いていきましょう!

卒論を書き上げた後、研究者を志す学生が初めにすべきこと

私の属している研究室では、修士進学者であるならば、ほぼ強制的に卒論をまとめなおし査読つき国際会議に投稿させている。理由は、修士の修了要件の一つが、少なくとも1編の論文を査読つきの学術雑誌・国際会議論文集に載せることなため。
(中略)
最近は、若手研究者を育てようという気運もあるため、丁寧に査読することを方針とする学術雑誌や国際会議も結構ある(採択されるためには何を追加すべきかという視点でコメントしてくれる)。ぜひ、そういう雑誌や会議の情報を先生や先輩から聞いて、そういうところに投稿してみると良い。

計算機科学系なら卒論は3月中にまとめなおして国際会議に投稿しよう - 発声練習

当の学生本人に対して投稿を奨励するのはよいことだと思いますが、学生を指導する立場の方がそれを「指導方針」として採用する場合には、是非ともお願いしたいことがあります。
それは一言で言えば「投稿する際には本気でアクセプトを目指してほしい」ということです。


id:next49さんはきちんと学生指導をされておられるのだと思いますが、もし学生指導に手を抜くタイプの指導者がそのような「指導方針」を採った結果、どう考えてもアクセプトなんかされっこないレベルの投稿論文が増えてしまい、その結果査読者の時間的/精神的負担が増すことになるとよくないなぁと思うわけです。
お互い様とはいえ、論文の査読は基本的にボランティアですからね。しかも、丁寧に査読する方針の(投稿者の立場からするとありがたい)雑誌/国際会議ほど論文増の影響が大きいわけですし。


かといって、査読者側の苦労を強調しすぎるとそれはそれで、控えめな学生に投稿を躊躇させてしまう結果になってしまいそうで、やはり望ましい状況とはいえません。
そこで、上述の「投稿する際には本気でアクセプトを目指してほしい」というお願いになるわけです。
私も、学生さんには積極的に論文を投稿してほしいと思います。本気でアクセプトを目指して投稿した論文であれば、結果としてそれがアクセプトのレベルに(遠く)及ばなかったとしても何ら責められることではありません。特に投稿者が学生であればなおのこと。
万が一、学生本人が本気で投稿するつもりの論文が実は査読者の迷惑になるレベルの代物だったとしたら、先生(指導教員)が投稿にストップを掛ければよいだけのことです。そして、そのような「指導方針」を採るつもりの先生方には、最低限「万が一の場合のストップ」は怠らないことをお願いしたいと思います。


いや、何でこんなお願いをしているかと言いますと、どうも最近、「論文の質を手軽に向上させる方法」としてろくに推敲もせずに手近な査読つき国際会議に論文を投稿する人がこちらの分野で増えているという噂を聞くのですよ。
で、それと関係するかどうかは不明ですが、私が今まで査読した3編の論文(最近ようやく論文の査読を頼まれるようになったので、まだ査読経験は浅いのです)のうち1編がすぐに見つかるような証明の不備、1編がそもそも問題設定自体がおかしい、という具合で「何だかなぁ」と言いたくなる内容だったもので、あんまり変な論文が増えると困るなぁ、と思った次第でして。


とか偉そうな口をきいている私自身、実は修士1年のときに先生に相談しないで勝手に論文を学術誌に投稿しちゃったことがありまして。
あのときは自分自身では本気で通すつもりで投稿したんですが、今思い返してみるとあんな論文でアクセプトされるわけがないよなぁと恥ずかしくなる程度の論文で、当然リジェクトされました。分量が少なかった(3ページ程度)ので査読者の負担は軽くて済んだと思いたいですが・・・
ただ、そんな論文投稿でも、「一度は論文投稿をしたことがある」という経験にはなったので、次の投稿(修士論文の焼き直し)の際の心理的負担はだいぶ軽かったように覚えています。(まぁ、そちらも結果はリジェクトだったんですが。)だから論文投稿はしておくものだと思います。でも、投稿前には先生に相談してからの方がいいですよ。少なくとも、絶対アクセプトされっこない論文のために期待して落胆することは避けられますから。