世の中、何がどう役立つかなんてわかりませんってば

id:kururu_goedelさんの記事より。

とりあえず、私たちは世界中の数少ない誰かが喜ぶ「面白さ」というのと、工業製品などに応用されてそれなりの人数の人が恩恵を蒙る「実用性」というのを違う軸にとって考えることが多いです。そして、「実用性」がないということを引き合いに出されて大学内の他の学科に比べて不利な扱いを受けたり、プロポーザルを批判されたりするわけです。だから、それに対してなんと答えるべきなのかというのは考えざるを得ないわけですよ。

実際問題として、私たちの研究では何が最終的に実用的だったり便利だったりするようになるのかは見当がつかないわけです。数十年ならまだしも、数百年後のことは普通予想できないですよ。だから「どのように世の中にインパクトを与えることが出来るか」を考えることはほとんど不可能なのです。それじゃあどうすればいいかというと、もちろんわからないのですが。私の感想としては、各研究者の知的興味に任せてとりあえず人間がわかることを増やしていくしかないのだろうと思うわけです。

id:taroleoさんのエントリに関すること続き - くるるの数学ノート

そう、世の中、何がどんな場面でどう役立つかなんてわからないんですよね。数学に関しても同様で、元記事に紹介されていた整数論と暗号の関係のようなこともありますし、どんな数学がどう世の中の役に立つかなんて事前に予測することは無理です。(特に、「これは役に立たない」なんて断言することは!)


でも、今はその「どんな数学が将来役立つかはわからない」ということを忘れている人(数学者自身を含め)が多いのではないかと思います。あと、いざ役立つ場面が訪れた際に数学がどれだけ強力な武器となるのか、ということも。
まあ、これは私自身も、今のように他分野に出かけてみて初めて体感したことではありますが。


その「将来どんな数学が役立つかわからない」ということを多くの人に思い出してもらうために、実際に数学が(しかも、なるべく意外な分野の数学が)役立つ場面を自らの研究成果として世に示したい、というのが私の現在の研究を支える思想の柱の一本となっています。
(そういう意味では以前お尋ねした問題超限帰納法が使えると面白かったんですが、あの元ネタの問題は結局Hahn-Banachの定理に帰着して解けてしまいました。まぁ、個人的にはそのHahn-Banachへ落とし込む過程もちょっと面白いと思ったのですが。)


そのためにも、「普通の」数学者の方々には、是非各々の興味の赴くままに面白い数学を積み重ねていって頂きたいと思います。
それは、私のような人間にとっての引き出しが増えることにもつながりますので。