学問における多様性の価値

その筋の方は既にご存知かもしれませんが、現在公募中の科研費のうち「新学術領域研究(研究課題提案型)」と「若手研究(S)」の2種目について、概算要求の見直しに伴い平成22年度分の新規募集の停止が発表されました。(文科省のサイトの当該記事


で、ちょうど前者の種目に応募しようとしていた私は見事に割を食ったわけですが。


何というか、学問というのは皆が同じようなことを同じような方法で研究していたのでは独創的な成果は大して見込めないわけで、研究テーマや研究手法の多様性が非常に重要なんですよ。科研費が募集対象(金額の多寡、年齢、個人研究/チーム研究の別など)の異なる多くの種目に分かれている点は、このような研究の多様性を育む上で非常に良く作用していたと思っています。
経済状況の厳しいこのご時世、科研費全体の予算を削るなとまでは言わないにしても、なぜ「種目を減らす」という暴挙に及んだのか、驚きと失望を禁じ得ません。


「新学術領域研究(研究課題提案型)」の公募要領に「成果が出るかどうかわからないけれども成功したら効果の大きい研究が対象」みたいなことが書いてあったのがひょっとすると良くなかったのかもしれませんが、この種目の顕著な特徴はその点ではなく、金額と研究規模の観点から若手でも応募しやすいチーム型研究対象の種目である点だと私は考えています。
科研費かそれ以外の助成金かに関わらず、(少なくとも私に関係する分野では)チーム型研究を対象とする助成金というのはすぐに基盤研究(科研費)だのNEDOだのCRESTだのといったレベルの種目になってしまい、若手が少人数で研究チームを組んで応募するには荷が勝ちすぎてしまうことが殆どなのです。(「新学術領域研究(研究課題提案型)」とて実際に若手が応募して通るかどうか不明ではあるものの、上述した他の助成金に比べれば敷居は高くないという印象です。)
そういうわけで「新学術領域研究(研究課題提案型)」は他団体の助成金を含めても稀有な存在なので、たとえ採択数を大幅に減らしたとしても種目自体は残しておいて欲しかった、というのが正直な感想です。(若手Sについては良く知らないので割愛。)


繰り返しますが、学問研究において重要な研究の多様性を育むという観点から、助成金の総額のみならず種目の種類自体を削るという今回の選択には明確に反対です。
今回の暴挙による日本の学術分野への悪影響が最小限に留まってくれることを切に願います。