日本国際賞授賞式に行ってきました

時間を見つけて書こう書こうと思っているうちに2週間以上経ってしまいましたが、仕事の関係で、4月23日に国立劇場で催された2008年(第24回)日本国際賞授賞式に妻共々出席してきました。(観客席の「その他大勢」の一員としてです。念のため。)

日本国際賞?それ食えるのか?(野沢雅子声で)

・・・この賞、関係者の気合の入れっぷりの割りに知名度が今一つみたいなんですよね*1。主催団体の国際科学技術財団の方々には今回の件などでお世話になった/なっているので、恩返しとして微力ながらここで宣伝してみます。


日本国際賞(英語名:Japan Prize)とは、「日本のノーベル賞」を目指して1983年に創設された日本政府公認(参考:http://www.japanprize.jp/prize/founding_j.htm)の国際的な賞で、「科学技術において、独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められた人に与えられるもの」(←財団のウェブサイトより引用)です。科学技術の全分野から毎年二つの分野が賞の対象分野として選ばれ、受賞者には賞状、賞牌及び賞金5,000万円(一分野ごとに)が贈られます。
賞金の高さもさることながら、かの松下幸之助氏が財団の初代会長で、松下電器ともども基金として50億円ほど提供していたり、授賞式には天皇皇后両陛下がご臨席されるなど、上にも書きましたが関係者のかなりの本気度が窺い知れます。
大筋では間違っていない説明だと思いますが、気になる方は国際科学技術財団による賞の紹介ページをご覧下さい。

今年は誰が受賞したのか

「情報通信の理論と技術」分野は、Vinton G. Cerf博士とRobert E. Kahn博士(参考:Google Japan Blog: 日本国際賞をいただきました。)。授賞理由は「インターネットのネットワーク設計概念と通信プロトコルの創成」ということですが、平たく言うとみんながお世話になっているTCP/IPプロトコルの発案者です。


「ゲノム・遺伝医学」分野は、Victor A. McKusick博士。授賞理由は「遺伝医学の確立と発展」とのことで、私は知らないのですが遺伝医学のバイブルとも言うべき名著を書かれた方でもあるそうです。

授賞式のレポート

実はYouTube国際科学技術財団の公式チャンネルがあって、授賞式の様子が一部公開されていたりもするんですが、それはそれとして個人的なレポートなど。

入り口ではセキュリティチェック

防犯上の観点から詳細は伏せますが、会場の国立劇場大劇場入り口ではセキュリティチェックが行われていました。出席者の顔触れが顔触れなので当然ですね。

芸大生大活躍、の巻

大劇場のホールに着くと、芸大の学生さんと思しき方々*2が琴の生演奏をしていました。他にも芸大オーケストラ*3による式典序曲の演奏やら記念演奏やら、果ては賞状授与の場面でBGMとしてハープを生演奏したり、と芸大音楽学部生の皆さん大活躍でした。
冷静に考えると、学生の身としてはとてつもない大任ですよね、これ・・・。お疲れ様です。


ちなみに日本国際賞の式典序曲は三木稔氏の作曲によるもので、私も現場で聴きましたが、和太鼓が効果的に使われていたりと良い意味で予想を裏切る好曲でした。(上述のYouTubeにある公式動画の20秒目から30秒ほど演奏の様子を楽しむことができます。)


あと、個人的にツボだったのがオーケストラによる君が代生演奏。君が代の旋律をこよなく愛する私としては、あれを聴けただけでも出席した甲斐があったというものです。

受賞者紹介ビデオ

なる映像が授賞式冒頭に流れたのですが、何と言うか、堅苦しい内容を予想して見ていたら思いの外ノリノリな内容(特にナレーション)で驚きました。上述のYouTubeの公式チャンネルでも動画が公開されていますが、公開先がYouTubeじゃなくてニコニコ動画だったら果たしてどんなコメントが飛び交っていたことやら。

天皇皇后両陛下がどういう存在なのかを改めて感じたいくつかの現象
  • 両陛下のご入場前に、「両陛下のご入場の際には座ったままで迎えるべし」とのアナウンス。
    • 「起立しろ」じゃないんですよ、「みんな起立して迎えたいんでしょう?それはわかってるけど、進行の妨げになるから座ったままで我慢してね」というニュアンスですよ。わざわざそんなアナウンスがなされる場面なんて初めてですよ。
    • しかも、そう言われているにもかかわらず再入場されたときには周り中がスタンディングオベーション
  • ご入退場時には、財団理事長自らが先導役を務める。
    • ちなみに受賞者入場時の先導役はごく普通の学生(大学院生)。
  • 賞状授与の場面で、受賞者は他の誰にも会釈しないのに両陛下に対してだけはきっちり一礼。
  • 受賞者のスピーチの第一声は、三人が三人とも「Your Majesties」。
  • 9分半余りの公式動画中、受賞者スピーチは数十秒ずつの抜粋なのに、天皇陛下のお言葉は約4分をノーカット収録。
記念演奏

閉式後、受賞者の希望曲を芸大オーケストラが記念生演奏しました。曲目は

の4曲。見事な演奏でした。妻はお気に入りのベートーベンが聴けて喜んでいました。
ちなみに式典後、妻と「自分だったらどの曲をリクエストするか」という話をしたのですが、「ボレロ」と0.1秒で即答した私に対して「それは長すぎるんじゃないかなぁ」と妻。むぅ。確かに長い曲ではあるけれども。

まとめ

最後ぐらい真面目なことを書きますと、張りのある雰囲気でありながら(合間合間の音楽が利いていたからか)堅苦しすぎることもなく、格調の感じられる良い式典だったと思います。
また、これは上には書きませんでしたが受賞者から若手研究者へのメッセージが紹介されたり、そもそも各分野の大御所だけでなく私のような若手にも今回のような機会を与えてもらったことなど、関係者の方々の「日本の科学技術分野の発展に役立ちたい」といった意識がひしひしと感じられました。
まだ設立されて四半世紀のこの賞。今後の発展に期待したいと思います。

*1:かくいう私も知らなかったので偉そうなことは言えません

*2:後述のオーケストラが芸大生によるものだったので恐らく

*3:指揮者は学生ではなく矢崎彦太郎氏(参考:http://conductor.cool.ne.jp/conductor/conductor/yazaki/yazaki.html