「数学的に憲法9条堅持を論破する」って言うのなら、せめてこれくらいはやってほしい
2008-05-10という記事で紹介されている(というかネタにされている)のを見たのですが、「偽善9条教を数学的に論破する!」なんて文章があったんですね。
実際は、「数学的に」と言いつつ数学じゃなくて論理学しか使っていないうえに、しかも間違っている(命題の対偶の取り方が間違っている)という二重に困った文章だったわけですが。
・・・数学を生業にする者として、こんな風に数学の間違った使い方が広まるのは忍びないので、自分も「数学的な九条論破」ってものをやってみることにしました!
初等整数論の一つの結果に、「正の整数nが二つ以下の平方数*1の和として表わされるための必要充分条件は、nを素数の積に分解したときに、4で割って3余るような素数がそれぞれ偶数個(0個も可)しか出てこないこと」という定理があります。(参考:二個の平方数の和 - Wikipedia、Square Number -- from Wolfram MathWorld)
例えば、11は4で割ると3余る素数なので、この定理によると119は平方数の和にはならないわけです。
「つまり、何かというといちいち(11)九条(9乗)を持ち出してくるだけでは、平和(平方数の和)にはならないんだよ!!」
「な、なんだってー!!」
「つまり、国(92)に九条(9乗)があるだけでは、平和にはならないんだよ!!」*2
「な、なんだってー!!」
「つまり、一概に(1垓2=100000000000000000002)九条(9乗)があるからといって平和にはならないんだよ!!」*3
「な、なんだっ(後略)」
やっつけ仕事なので今一つですが、「数学的に」などと数学を政治的主張に利用するからには、せめてこれくらいのことはやって頂きたいものですね。
あ、ちなみに512=29は256(=162)と256の和なので、「日本(2本)に九条(9乗)があっても平和にならない」、とは言えませんけどね!