二項演算を持つ集合が群になる条件

某所で話題になっていた件についての備忘録です。

命題

空でない集合Gに結合法則を満たす二項演算Bが与えられている(以下、B(x,y)をxyと略記)とき、以下の2条件
(1)Gの任意の元 x について、写像 Lx:G → G, Lx(y)=xy は全単射
(2)Gの任意の元 x について、写像 Rx:G → G, Rx(y)=yx は全単射
を満たすならば、Gはこの二項演算に関して群となる。
(注意:Gが群ならばこれら2条件は満たされるので、実際はこれら2条件はGが群となるための必要充分条件です。)

証明

ステップ1: ee=e となる元 e が存在

Gの元 g をどれか一つ取る。条件(1)の全射性より、ge=Lg(e)=g となる元 e が存在する。このとき Lg(ee)=g(ee)=(ge)e=ge=Lg(e) となるので、条件(1)の単射性より ee=e (ステップ1終わり)

ステップ2:ステップ1の元 e は単位元

Gの任意の元 g について、h=ge と置くと、 Re(h)=he=(ge)e=g(ee)=ge=Re(g) (4番目の等号でステップ1の性質 ee=e を使用)となるので、条件(2)の単射性より ge=h=g となる。積の順序を入れ替えた同様の議論で eg=g も示せるので、 ge=g=eg (ステップ2終わり)

ステップ3:逆元の存在

Gの任意の元 g について、条件(1)(2)の全射性より fg=e=gh となる元 f と h が存在する。このとき h=eh=(fg)h=f(gh)=fe=f (最初と最後の等号のためにステップ2の結果を使用)となるので、 fg=e=gf つまり f が g の逆元となる。(証明終わり)