フィギュアスケート(シングル)の採点方式への疑問 私的まとめ
既に他のところで指摘されたものが殆どですが、整理のためにまとめておきます。順番は思い出した順。
- GOEの比重が大きすぎ
- GOEの評価幅は-3から+3。3回転ジャンプ(3A除く)で最高難度の3Lzの基礎点は6.00(ジャンプの基礎点はこちらのページの表より)。つまり、一応の基準はあっても実際にはジャッジの主観にかなり影響される(GOEの基準についてはこちらの記事を参照)GOEが、3回転ジャンプ一つ分の重みを持つことになる。
- 4回転/浅田真央の3Aの評価が不当に低いと感じられる要因の一つでもあると思われる。4回転や(女子の)3Aのように回転数の多いジャンプは跳ぶだけで大変なため更にGOE加点まで得るのは難しいが、一方クリーンな3Lzを跳ぶ選手は男女共に結構な人数いるため、平均して見ると4T(基礎点9.80)や3A(基礎点8.20)で得られる点数と3Lz(基礎点6.00+GOE)で得られる点数はあまり変わらない。
- 男女でジャンプが同じ点数
- どんな組合せでも、連続ジャンプの基礎点は常に単独ジャンプの足し算
- こちらの記事でも主張されている通り、「2回転の後の3回転」と「4回転の後の3回転」が同じ価値だなんてことはないと思うのだが、現在のルールではそうなっている。
- なお、ここで言う「連続ジャンプ」は正確にはコンビネーションジャンプのことで、ジャンプシークエンスの配点はまた異なるので注意。
- 「明らかな回転不足」と「ぎりぎり回転不足」が同じ基礎点
- ほんのちょっとだけ回転が足りない4Tの失敗ジャンプと、空中であきらめて3Tにしたジャンプでは基礎点が同じになる(その上、後者の方が着地が決まりやすいのでGOEも高くなりやすい)。これでは難しいジャンプに挑戦する人が余計少なくなってしまうだろう。
- 「ぎりぎり回転不足」に中間点を与えるルール改定案が挙がっているという話もあり、個人的にはそれ自体は良い方向性だと思う。ただ、この部分だけ変えても現行の採点方式への疑問が払拭されるかというとそんなことはないだろうが。
- ほんのちょっとだけ回転が足りない4Tの失敗ジャンプと、空中であきらめて3Tにしたジャンプでは基礎点が同じになる(その上、後者の方が着地が決まりやすいのでGOEも高くなりやすい)。これでは難しいジャンプに挑戦する人が余計少なくなってしまうだろう。
- ジャンプの希少価値が点数に反映されない
- 今回の五輪で4回転-3回転のコンビネーションジャンプを決めたのはプルシェンコただ一人であり、FSで4回転を2回(ぎりぎりだけど)決めたのはランビエールだけであり、女子で3Aを合計3回(うち2回は3A-2T)決めたのは過去の五輪を含めても浅田真央ただ一人である。でも、プルシェンコの4T-3T(13.80)は他の選手の3A-3T-2Lo(13.70)とほぼ同じ基礎点、浅田真央の3A-2T(9.50)に至っては他の選手の3F-3T(9.50)と同じで3Lz-3T(10.00)よりも低い基礎点である。これでは新しい、より難しい技に挑む選手が報われない。
- まぁ、全員が滑り終わってから得点を出すわけにもいかないので実装が難しいとは思うのだが。
- 私の記憶では、新体操では新技を開発するとその後も得点による見返りがあると聞いたことがある。当時は何となくずるい気がしていたのだが、今思えば新技の開発にはそのくらい強い動機付けを与えるべきということなのだろうと納得がいく。
- 今回の五輪で4回転-3回転のコンビネーションジャンプを決めたのはプルシェンコただ一人であり、FSで4回転を2回(ぎりぎりだけど)決めたのはランビエールだけであり、女子で3Aを合計3回(うち2回は3A-2T)決めたのは過去の五輪を含めても浅田真央ただ一人である。でも、プルシェンコの4T-3T(13.80)は他の選手の3A-3T-2Lo(13.70)とほぼ同じ基礎点、浅田真央の3A-2T(9.50)に至っては他の選手の3F-3T(9.50)と同じで3Lz-3T(10.00)よりも低い基礎点である。これでは新しい、より難しい技に挑む選手が報われない。
- ジャッジと採点の対応関係がわからない
最後に余談。今回の五輪フィギュアでの採点に異議を唱える意見に対して、「事前の働きかけも含めての勝負なのだから、日本も自分達に有利なルール実現のために努力すべき」という反論がちらほら見られる。しかし、それは日本人の精神性に反する行為であろう。「自分達に有利な」ではなく「フィギュアスケートという競技自体の発展にとってより好ましい」ルールを望み、その上でルールに則って勝負して勝つ、それが最上の道であると私は強く主張したい。