同値変形より「⊆かつ⊇」の証明が優れている点

http://d.hatena.ne.jp/uskz/20080811/p9とかhttp://d.hatena.ne.jp/uskz/20080811/p2とかで語られていることって、集合の話で考えると「A⊆BとA⊇Bを別々に示すぐらいなら、同値変形でA=Bを一度に示した方が手っ取り早くね?」ということですよね。

証明できればどんな筋だってよいんですよ、ぶっちゃけた話。むしろ、ひとつの問題に対していろんな考え方をする人がいるからこそ、難しい問題に立ち向かうときに役に立つわけで。ただ、この梶本さんという人の解き方は、定義が複雑になったときに手が動かなくなりやすそうだということと、同値でつなげていくときはどうしても逆をチェックするのを忘れがちだというところで、やっぱり怖いです。

証明方法とか云々 - くるるの数学ノート

くるるさんの仰る「証明できればどんな筋だってよい」というご意見には同意ですというか日頃筋悪な証明ばかり書いている身としては同意しないと自己矛盾を起こすわけですが、それはそれとして両側の包含関係を別々に証明する方式の利点というのも確かにあると思います。
というのも、例えばA、B、C、Dという四つの集合があって、A⊆B⊆C⊆D⊆Aという方向の包含関係はそれぞれ容易に証明できるけれども、逆向きのA⊇B⊇C⊇D⊇Aはどれも直接証明するのは難しい*1という状況も考えられるわけです。ここでA=Cを証明したいときに、別々に証明する方式であれば補助的な集合BとDを導入することでA⊆B⊆CとC⊆D⊆Aを示せばよい(これは容易)ですが、一度に証明する方式ですとAからBへの同値変形やAからDへの同値変形が難しくて行き詰ってしまう危険性があります。
というわけで、片側ずつ別々に証明していくのが安全な解き方といえるでしょう。もし片側の証明中に「あれ、これ逆も簡単に示せるんじゃね?」と思ったら逆側の証明にもそれを使えばいいわけですし。


とはいえ、今月の数学セミナーのどなたかの記事にもあったように、a≦bとa≧bを証明しただけではa=bという事実を真に理解したことにはならない、という考えもありますし、それもまた真実であろうと思います。
仮に困難であるとしても、同値変形による証明を試みることでより深い理解へ到達できる可能性もありますから、全ての面で同値変形より「⊆かつ⊇」の証明が優れている、ともいえないんですよね。

*1:もちろん、容易な方向のB⊆C⊆D⊆Aを全て示せばそこからA⊇Bが従うわけですが、そういうのはおいといて