サッカーと野球のルールはどちらが難しいか
元ネタはid:aratasuzukiさんの記事。興味深く読んだ上にコメントまでしているわけですが、記事の追記の最後にあった
んでも、やっぱり、私はサッカーの方が野球より少なくともルールは複雑だと思うけどなぁ(笑)
という部分について、元記事の本題からは外れていることを承知の上で。
件のコメントにも書きましたが、っと違った、コメントに書いたのは「妻はそう言ってた」という話だけだった、まぁともかく私はサッカーのルールと野球のルールでは後者の方が難しいと思います。
とその前に、まず何をもってあちらのルールよりこちらのルールが「難しい」と捉えるのか、それを整理します。ぱっと思いつく比較項目としては
- ルールをよく知らない人にとって難しいかどうか*1
- ルールをそれなりに知っている人にとって難しいかどうか
- ルールを熟知している人にとって難しいかどうか
- ルールブックの分量(?)
が挙げられます。ここで「ルールをこれこれのデータ構造で表わしたときの構造体(ツリーのような)の幅/深さ」、とかいかにも数学者っぽい項目を挙げることができれば格好良い*2のかもしれませんが、その手の話には疎いので割愛。
以下、それぞれの項目について考察してみます。
1.ルールをよく知らない人にとって
件のコメントにも書きましたが、私の妻は少し前まで野球のルールもサッカーのルールも全然わかっていませんでした。その後私が熱心にルールを説明した結果、サッカーは私と一緒に観戦していて不自由を感じない程度にルールを理解してくれましたが、野球に関しては相変わらず「野球ってどうやったら点が入るんだっけ?」という程度の理解度です。
で、そんな妻の疑問点を私なりに分類してみると、大きく分けて以下の三通りになります。
- 勝利条件
- 「どうやったら点が入るの?」*3
- プレイヤーの可能な行動
- 「アウトになるとまずいのはわかるけど、どうやったらアウトになるの?」
- 試合の流れ、もしくは終了条件
- 「・・・チェンジ、だっけ?あれってアウトいくつでなるんだっけ?」
私の考えでは、ルールを知らない人が「何となく試合を見る」といった状況でその人が試合を楽しめるかどうかの分水嶺は、上記の三点を把握できるかどうかだと思います。私自身の体験でも、先日インド出張の最中にホテルのテレビでルールをろくに知らないクリケットの試合を見たときは、上記の三点を何となく把握できるまでの間は疑問符の連続でしたが、少しずつ把握できるようになったら試合が「面白い」と感じられるようになりました。
試しに、大雑把にですが、サッカーについて上記の三点を説明してみますと、
- 勝利条件=「相手のゴールにボールを入れると点が入る。」
- 可能な行動=「ボールは手で触っちゃだめ。」
- 終了条件=「時間がきたらハーフタイム、もう一度きたら試合終了。」
と、勿論細かい事例は落としまくっているわけですが、少なくともgenericなケースには対応できる程度の説明なら一言で簡単にできるわけです。
しかしながら、野球について同様のことをしようとすると、まずどうやったら点が入るのかを説明するだけで一苦労です。というか結局妻には理解してもらえませんでした・・・。また、サッカーの場合には「45分ハーフ*4」の「45」という数字自体には本質的な意味はなかったのに、野球の「3アウト」の「3」はわりと試合の根幹に関わる数字なわけで、でもこの「3」という数字が直感的に憶えにくかったり。更には野球で「どうやったらアウトになるか」を一言で説明するなんて、少なく見積もっても「3ストライク、4ボール未満」「一塁フォースアウト」「フライ/ライナー」「タッチアウト」ぐらいは説明しないといけないんですから、そりゃ星一徹氏だってちゃぶ台引っくり返したくもなりますよ。
・・・少々羽目が外れましたが、要はサッカーのルールの根幹部分は手短に説明できるのに対し、野球で同じことをするのはかなり難しいわけです。*5「ルールを知らない人」が何となくでも把握できるルールはそう多くないわけですから、これはルールを知らない人にとって野球のルールの方がサッカーのそれよりも難しい、ということを意味すると言えるのではないでしょうか。
2.ルールをそれなりに知っている人にとって
多分私は野球に関してもサッカーに関してもこのカテゴリに属してまして*6、普段試合を見るぶんには殆ど苦労しないのですが、そんな私があまり理解していないけれども試合展開上重要そうなルールといえば・・・えーと・・・野球では「ストライク/ボールの厳密な判定法」「ボークの判定法」、サッカーでは「戻りオフサイド」「反則時に直接フリーキックと間接フリーキックのどちらになるか」位でしょうか。きっと探せばまだあると思いますが、とりあえずすぐに思いついたのが両方とも二件だったので本項目はあいこ、ということで。
3.ルールを熟知している人にとって
上述の通り私はこのカテゴリの人が見る世界を語れる立場にありませんので、本項目は割愛します。
・・・このカテゴリにいたら、「ONE OUTS」をより深く味わえたのかなぁ・・・(いや、充分過ぎるほど面白く読みましたが)。
4.ルールブックの分量(の少なさ)
amazonによると2007年3月発行の日本プロ野球組織編纂「公認野球規則2007」は冊子体で17cm×11cm×268ページ、一方JFAのサイトで見られる「サッカー競技規則2007/2008」+「審判員のための追加的指示およびガイドライン」はPDFファイルで計134ページ*7です。
- 作者: 日本プロフェッショナル野球組織,日本学生野球協会,日本野球連盟,JBF=,日本高等学校野球連盟,日本高校野球連盟=,高野連=,日本高野連=,全日本大学野球連盟
- 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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個人的には競技規則を無料公開しているJFAの方に好感を持ったのでサッカーに一票入れようかとも思ったのですが、それはあんまりな気がしたのと、私の見落としで野球でもプロ野球組織などの組織がルールを無料公開している可能性もあるので、この項目も考慮せず、ということで。
まとめ
というわけで、対戦結果はサッカーの1勝、野球の0勝、1引き分け、2無効試合となりました。全体の半分が無効試合じゃサンプルとしてどうなんだ、という疑問はありますが、サッカーの1勝は元記事の主眼であった「とっつきにくさ(やすさ)」における勝利ですから、その点を重視して今回の結論は「野球の方がサッカーよりもルールが難しい」としたいと思います。
なお、それでもやはりサッカーの方が野球よりもルールが難しいと思われていて納得がいかない方は、上述した「相手のゴールにボールを入れると点が入る。」「ボールは手で触っちゃだめ。」「時間がきたらハーフタイム、もう一度きたら試合終了。」と同程度かそれ以上に簡潔かつ不足のない野球のルールの一言説明をコメント欄などでご教示下さいますと、妻への説明の参考にさせて頂くことができて私としてはとても幸いに存じます。
*1:循環論法っぽい記述になってますが、その辺は言葉でなく心で理解して頂けますと幸いです。
*2:もしくは皆さんが帰ってしまう
*3:厳密には、と言いつつ細かい条件を省けば、勝利条件は「相手より多く点を取ること」なわけですが、それはおよそ世の中の球技の殆ど全て(私は雷電でも本部さんでもアヴドゥルさんでもないので「全て」とは言いませんが)に当てはまることなので、本質は「どうやって点を取るか」という点にあるわけです。
*4:男子プロ仕様。
*5:サッカーに関して、ゴールキーパーの存在とオフサイドくらいは説明しないと駄目だろう、というツッコミがあるかもしれませんが、野球に関してそのレベルの特殊ルールを挙げていくとそれこそ大変なことになると思います。
*6:別に「○○さんに比べたら自分なんかまだまだオタク/マニアじゃないっすよ」話法ではありません。
*7:2008年3月2日現在