科研費が校費(運営費交付金)の代わりにはならないと思う理由二つ

今更、ではありますが、考えの整理も兼ねて。


第一に、学生用の研究室運営(パソコン・書籍含む備品類、学会旅費、などなど)に使うことが難しいということです。
科研費は研究のための資金であって教育のための資金ではありませんし、そもそも申請した研究計画以外の用途に使用すること(目的外使用)は禁止されています。学生皆が皆、科研費の研究課題に合致した研究を志向するでしょうか?科研費を学生の教育指導に活用できる機会が皆無とは言わないまでも、そのような機会が制限されるのは明白でありましょう。


第二に、学問分野や社会情勢の変化に即応し辛いということです。
科研費の応募の機会は基本的に年1回ですし、上述の目的外使用の禁止という規則もあります。応募締切の直後に、その分野や社会である出来事(大災害かもしれないし、新理論の提唱かもしれない)が起こり、その中から新たな重要研究課題を見出した人がいたとしましょう。その人は、手持ちの研究を中断して新しい研究を優先させるわけにもいきませんし(目的外使用の禁止)、次回の応募まで1年(応募から採択・予算配分までの期間を考えるとそれ以上)待たなければならないでしょう。世界中の競争相手に先を越されないことを祈りながら。


昨今の(ここでは、日本の大学の)研究者に対する社会の期待は、優秀な学生の育成と、産業に役立つ研究とに大きな力点が置かれています。であれば、投入される予算も、学生のために使用でき、また、産業界の速度に対応して研究課題の優先順位を柔軟に切り換えられる、校費(運営費交付金)のような制約の少ない形式に重点を置く方が、上述した社会からの期待により応えやすくなるのではないでしょうか。
予算の厳しい社会情勢だからこそ、効果的な予算活用を支える制度が望まれます。